ESG(環境:Environment 社会:Social ガバナンス:Governance)は、企業が長期的に成長していくための思考として、全世界で取り入れられつつある。
今回は、環境:Environmentの視点から「プラスチック」について言及していきたい。プラスチックの話となるとSDGsに似ているように思えるが、ESGの思考にもプラスチック対策は重要なポイントとなってくる。
昨今、プラスチックストローの廃止、紙ストローでの代用、レジ袋の有料化など、多くの企業等で「脱プラスチック」への取り組みに力を入れ始めている。確かに、脱プラスチックの話は魅力的に思えるが、本当に脱プラスチックはエコなのか?今回は、脱プラスチックに取り組む際の裏側について3つほど言及していきたい。
1つ目:紙袋の生産には多くの資源が使われる?
プラスチック袋の代用品として、使用され始めているのが紙袋だ。確かに、プラスチック袋よりかは良いかもしれないが、これらの生産には多くの資源を使用している。紙製品の生産に使用される水とエネルギーは、プラスチックを生産する時よりも4倍かかるとされている。脱プラスチックへの取り組みは、確かに行っていかなければならない課題ではあるが、プラスチックを極力使用しないことに囚われすぎて、他の環境に影響を及ぼしてしまっては元も子もない。食品企業やメーカー、パッケージに関する企業が、脱プラスチックを目指す際には、他の環境に悪影響を及ぼしていないかどうかを確かめる必要がある。
2つ目:プラスチック袋より紙袋の方が処分が大変?
次に、袋を廃棄する際の話に移る。
プラスチックを燃やす際に発生するダイオキシンという有害物質によって、人間にも環境にも悪影響を及ぼすとされている。しかし、ダイオキシンが発生しないプラスチック製品が開発されたり、プラスチックを燃焼する際にダイオキシンが発生しない温度で燃やしたりと工夫が施されている。一方、紙袋を焼却する際のデメリットとして、プラスチックよりもかさばること・埋め立て地がより必要になること・温室効果ガスの排出量がプラスチック袋の消却時よりも増加すること。などが挙げられる。本来であれば、使い捨てではなく何回も使用できるようにすることが望ましいが、必ずしも使い回しできるかと問われれば、簡単にYESとはいえない。
3つ目:さほどプラスチックの使用は減少していない?
近年、多くの飲食店でプラスチックストローが廃止され、飲食店によっては代替品として「紙ストロー」が導入され始めた。使用したことがある人は分かるかもしれないが、あまり心地よい使い勝手ではない。しばらくすると紙がふにゃふにゃになり、かじっていないのにぐちゃぐちゃになることもある。さらには、紙ストローが飲み物の味を邪魔してしまい、
なんだか紙を食べているような気分にもなる。これらに関しては、人間側の都合のため、環境には何ら関係ないが、問題は紙ストローを包んでいる袋、紙ストロー以外のコップの材質についてだ。プラスチックストローの際は紙で包まれていたが、今となっては、紙ストローを包むためにプラスチックを使用している。また、ストローは紙に変更されたが、飲みものを入れる容器はプラスチックのままだ。ストローよりも多く使用される容器や容器のフタの材質について取り組むべきとも言えるだろう。
今回は、脱プラスチックは本当にエコなのか?について言及した。脱プラスチックへの試みはこれからも続けていくべきだが、その際にプラスチックばかりに気を取られすぎて、結局他の場面で環境に負荷をかけてしまっては、本末転倒である。この課題に取り組む際には、あらゆる角度から環境への負荷がないか?を確かめながら、取り組むべきだろう。
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